プリズムの煌めきの向こう側へ

二次元アイドル・アニメ・声優あたりの話題中心で、主に備忘用のメモ

山岡ゆりについて他

小森健太朗+遊井かなめ編著『声優論 アニメを彩る女神たち〜島本須美から雨宮天まで〜』 - logical cypher scapeを読んだら、自分もなんか声優論書けるんじゃないかなと思って書いてみたw
が、まああんまりちゃんとは書けなかったので、個人的なメモ書きとして。

山岡ゆりについて

山岡ゆりは、比較的甲高くてロリっぽい声を一つ目の特徴としている。自分が山岡ゆりという声優を知ったのが、『境界の彼方』の新堂愛役を演じていた時なのだが、新堂愛はまさにこの系譜に属する声だ。付け加えるならば、彼女がラジオなどのパーソナリティとして話す時の声もこれに近い。どちらにせよ、鼻にかかったようなところがあって、それが幼さを感じさせる要因になっているのだろう。
しかし、多くの声優がいくつかの声を使い分けているように、山岡の使う声にももう一つの系統がある。
境界の彼方』を視聴していた頃、同時期に『ガールズ&パンツァー』の再放送があったのであわせて視聴していた。山岡ゆりは宇津木優季役で出演しているが、当時まだ登場人物の把握や声の聞き分けが出来ていなかった自分は、秋奈が演じる大野あやを山岡ゆりと誤認することが度々あった。秋奈の出すキャラ声の方が、山岡よりさらに高めかなと思うのだが、わりと似ているのではないかと思う。また、当時の自分は、彼女がパーソナリティをしているラジオからの印象に引きずられているところがあった。ラジオでの山岡はハイテンションで騒いでいることが多く、のんびりしたしゃべり方をする宇津木よりもテンション高くしゃべる大野の方が、山岡っぽく聞こえたのだろう。
宇津木は、どちらかといえばゆっくり、ほんわかした話し方をするキャラクターだ。もっとも、それだけであれば、新堂愛も同じ部類に属する。しかし、声としては、甲高いというよりもむしろ、ちょっと低めな音程であるように聞こえるという点が異なる。そして、山岡の声の特徴である「鼻にかかったような」ところが、幼さというよりはむしろ、ツンとした感じ、あるいは大人っぽさのように捉えられるのだ。ここでいう「ツンとした」というのは、ツンデレ的なツン(主人公への当たりがきつい感じ)というよりは、ちょっと澄ました感じというようなニュアンスである。
これが、『トライブクルクル』の音咲カノン役では、彼女の育ちの良さをうまく表すことに生かされているように思える。声からは大人びた落ち着いた雰囲気も聞き取ることができるだろう。しかし、彼女はあくまでも中学生の引っ込み思案な少女であって、大人というわけではない。中学生なりに悩んだり怒ったりもするのだが、代議士を父親にもつ裕福な家庭に生まれ、伝統ある女子校に通っている育ちのよさが、そうした感情をおおっぴらに表出させるのを抑えている。元々幼さを感じさせる山岡の声に、鼻にかかったような低音の要素が付け加えられることで、カノンのこのようなあり方がうまく表されている。
さて、ここまで挙げてきたキャラクターはみな少女の役であり、山岡のキャリア全体を見ても少女の役が多い。それはやはり、元々の山岡の声質として少女役が一番あうからだと考えれば当然である。とはいえ、宇津木優季や音咲カノンに見られるように、ただ幼く、あるいはただほんわかとしたキャラクターではなく、どこかツンとした感じ、大人びた雰囲気を漂わせるところのあるキャラクターもあるのである。そしてこの、どこかツンとした感じがむしろ前面に押し出されてきたキャラクターとして、『SHIROBAKO』の矢野エリカがいる。
矢野は、『SHIROBAKO』では主人公の先輩にあたる社会人だ。既に働き始めてからある程度の年数が経っている矢野は、見た目こそ少女的なところがあるが、少女の役とは言えないだろう。むしろ、主人公にとって頼れる先輩であり、時に目上の人間であれ厳しい言葉も言い放つ大人の女性であり、これまで山岡が演じてきたキャラクターと比較するとだいぶ違う役だとも言える。しかし、ここまで見てきたならば明らかなように、全くかけ離れた役というわけではなく、連続性がある。これまでも声の性質としては大人びた要素は含まれており、その比率が変わったものとして、矢野エリカ役の声があるのだ。
もっとも、決して完全な大人の声、というわけではないのは、中原麻衣演じる興津由佳の声と比べれば一目瞭然である。あの「鼻にかかったような」声は、やはり幼さを感じさせる要素としても機能する。しかし、その同じ要素が、大人びた雰囲気、いやそれだけでなくほのかな色気としても聞こえてくる。
山岡ゆりは、大きく分ければその声に2つの方向がある。その声質を幼く響かせるか、ツンと響かせるかだ。後者の極として、矢野エリカ役はある。実は、同じ作品中で前者の声も聞くことができる。『SHIROBAKO』の作中作『第三少女飛行隊』の中に出てくるタチアナは、山岡が、ロリ系の系統の声で演じている。
また、ロリという意味でいえば、iOS及びAndroidアプリゲームである『Tokyo 7th sisters』において、山岡の演じる星柿マノンは8歳で、文字通りのロリキャラである。このゲームは、いわゆるアイドル育成ゲームだが、星柿マノンは、魔法少女になりたくてアイドルを志す。さて一方、山岡はインタビューで、声優になった動機を魔法が使いたかったからと述べていたことがある*1。こうした一致は、このキャスティングに運命めいたものを感じさせずにはいられない。矢野エリカ役が、山岡ゆりのキャリアの中で重要な位置を占めるのは間違いないが、願わくば、この星柿マノン役でも何らかのブレイクがあってほしい。


以上


これを書き終わったあとに、こんなのを見つけたので見てみたのだけど、うーん、2つあるっていうより、段々低くなっていったという感じなのかなあ。というか、カノンと矢野が違って、あとは大体甲高い声、というか。あ、『げんしけん二代目』の今野も、わりと着目すべき奴だ



伊藤かな恵について

彼女の声は何故ギターサウンドと相性がいいのか。
それは、声に芯の強さがあるからだ。
伊藤かな恵の声は、いい意味でも悪い意味でも分かりやすい声である。メインヒロイン向きの、明るくてはっきりとした声だ。ある意味でそれは特徴が薄いように思えるが、伊藤かな恵の声は(作品による声の使い分けがあまりないせいもあるが)、いついかなる時も伊藤かな恵の声だということがすぐに分かる。
ところで、伊藤かな恵は、声優ではなく本人のタレント・パーソナリティとしては、背が低く小柄であることや天然な反応を示すことで知られている。可愛らしい妹的な「キャラ」だ。
しかし、そういう彼女本人が持っている「キャラ」と彼女の声の「キャラ」は、必ずしも一致していない。それは、役を演じている時だけでなく、本人としてラジオなどで話している時でもだ。彼女の声は、いついかなる時でも伊藤かな恵の声だ、というのはそういう意味でもある。そして、その声の「キャラ」の特徴こそが、芯の強さにあるのだと思う。お姉さん的なところのある声だと言えるかもしれない。
そうした声質は、演じるキャラにはよく対応している。例えば、『とある科学の超電磁砲』の佐天涙子。彼女は悩みもするし弱りもするが、それをうまく乗り越えていく強さがある。ところで、彼女はエピソード中に比較的長いモノローグがあるキャラクターでもある。『超電磁砲』のアニメの中で、他のキャラクターにはあまり見られないことだ。自分のコンプレックスを語るモノローグだ。こういう語りをしっかり聞かせられるのも、声のもつ強さのためだろう。
芯の強さがギターと相性がいい、というのはある意味で分かりやすい話だ。ギターの音に負けない、と言えるからだ。そして、伊藤が得意とする少し低めの音域では、豊かさがある。この豊かさが、元気な曲では力強さに、少し静かな曲では色っぽさに繋がっている。高音になるにつれて、その豊かさは消えていくが、それはそれで女の子の可愛らしさとなっているように思う。


個人的には、癖のある声が好きなのだが、その中で、伊藤かな恵は癖のない声で、そうだというのになんで好きなのか、というのが分からなくて、「彼女の声は何故ギターサウンドと相性がいいのか」という問いはそういう意味合いもある。
それで、他の声優と比較しようとしたのだが、全然うまくいかなかった。
うまくいかなかったんだけど、まあせっかくだから書いとくw

豊崎愛生

豊崎愛生だ。彼女の声質は、およそ伊藤と相反するものだ。柔らかくどこか捉えどころがない。豊崎は『けいおん!』で平沢唯を演じ、作中に出てくるバンド「放課後!ティータイム」として主題歌も歌っている。ここで特に注目したいのは、「Cagayake!GIRLS」を始めとするオープニング曲である。これらの曲は、スピードが速くギターががんがん掻き鳴らされて、ある意味とても騒がしい、ロックな曲だ。そこに、豊崎の声はマッチするのか。普通に考えると、この騒がしいオケの音に負けてしまいそうだ。しかし、豊崎の甲高くもふにゃっとした声は、騒がしい音を構成する一つとしてうまく組み込まれている。このギターの音と彼女のアニメ声の組合せは、違和感がある。しかし、その違和感をある種の「癖」として捉えることもできる。
伊藤の声は、メインヒロイン的な声ではあるけれど、豊崎的なアニメ声では決してない。

内田真礼

最近歌手デビューをした内田真礼だが、彼女のシングル曲は、飛び道具に満ちている。これはおそらく、プロデューサー冨田明宏によって仕組まれていることだ。とにかく、1つの曲のなかで色々な声音をだしている。普通に歌っていたと思ったら、感嘆詞を発したり、セリフがあったり、とバラエティに富んでいて飽きることがない。内田真礼の、ちょっと滑舌の悪い感じやピーキーな声などが魅力的な要素として詰まっている。
ところで、カップリング曲の方を聞いてみると、曲調自体が、A面と比べるとわりとシンプルになっている。こういうギターロックな感じの曲を、内田が歌うのも、あるいはy0c1eが作曲しているということも、個人的には意外な感じがする。そして、肝心なことは、この曲調は伊藤かな恵が歌いやすそうな曲調だなと思えることだ。内田のA面曲はとても伊藤かな恵向きではないことを考えると、これまた少し意外なところである。


ひっかかる声

小森健太朗+遊井かなめ編著『声優論 アニメを彩る女神たち〜島本須美から雨宮天まで〜』 - logical cypher scapeで書いたこと

帯に、批評×声優とあるけれど、個人的には、声優を批評する上で求めるのは、声をどのように言い表すかの語彙
自分がボカクリとかフミカとかで音楽について書いていた時も、音・音色についての語彙というのが一番欲しかった
まずは、どうだったか記述するところから始まると思うのだけど(現象学ってよく分からないけど、現象学も近いところがあるのではと思う)、曲のこのタイミングでこういう音が鳴っていたとか、このセリフのこの言葉がこういう声で発せられていたとか、そういう記述のための語彙。
音楽であれば楽譜・楽理、声だったら発声法についての語彙とかがあるのだろうけど、個人的にはもっと音色・声色のことを書きたい。自分が惹かれるのはそういうところだし。
このタイミングでこのディストーション・ギターのフィードバックの音がいいんだ、とか、このグリッチ・ノイズがじりじりと後ろで不規則に刻んでいるのが脳裏に残るんだ、とか
このセリフの息を吸ったときに裏返った感じの声がぐっとくるんだ、とか、怒鳴り声をあげたときに濁ったようになるのが癖になるんだ、とか
まあ、そこまでミクロに記述するのってかなりの労力が必要で大変だけど
そもそもその記述のための語彙がなかなか難しい
で、そういう記述のあとに、価値判断なり枠組みなり概念なりが出てくるのかなあとは

女性声優の声の魅力として、明るい声、甘い声、柔らかい声だけではないものがあるはずで、それは音楽において、ディストーションギターやノイズのように、美的にマイナスとされていたような性質(音割れ、騒々しい、夾雑物)がむしろプラスに評価される性質として捉えられるようになったように。
(この観点からいくと、なおのこと、自分にとっての伊藤かな恵の声の魅力というのが謎になっていくが……。)


具体的に思いついたのは


佳村はるか
弱々しい声のかすれが、あたかもグリッチノイズのように響く


藤井ゆきよ
あの、いわゆるクソガキ声


μ's(南條愛乃久保ユリカ
濁点のついたような発声、というのがある。久保ユリカ演じる花陽の「サキニカエッチャッタノ」は有名だ。また、南條愛乃も、叫ぶような演技をするときに、多少濁った音を出しているように思う。

秋奈

最近、急速に気になり始めている。彼女には3つの声がある。1)キャラ声、2)歌声、3)素の声である。
キャラ声としては、『ガールズ&パンツァー』の大野あややアイカツ!』の冴草きぃの声が挙げられる。分かりやすく甲高いアニメ声。
アイカツ!』というアイドルアニメに出ているが、『アイカツ!』は、キャラクターの歌唱担当が声優とは別にいるため、歌は歌っていない。自分が彼女の歌を聴いたのは、ナナシスの「B.A.A.B」だったが、クラブサウンドに絡んだ、低めで色気のある声だったので驚いた記憶がある。また、ガルパンのラジオでジングルとして簡単な自己紹介をしており、「歌が得意」といって簡単に歌ってみせるのだが、歌唱用に全く別の発声をしているのがよく分かる。
そして素の声である。キャラの声と素の声が違うのは、ままあることであり、その点では決して珍しくも何とないが、キャラ声と比べて、とても落ち着いていて喋りの聞きやすい声であった。